小説「電子の海で真実の愛を見つける方法」/作:藤間丈司
マッチングアプリをしていると出てくる身体だけが目当ての相手問題。真面目なお付き合いが出来るパートナーを探したい人にとっては厄介な存在です。今回はそのふるい分け方を考えます。
第四章「マッチングアプリと男性の下心」
パソコンで作業をしているとメッセンジャーソフトがポップアップする。メッセージの主は新堂さんだ。「そろそろ会議の時間だぞ」とのこと。私は送り忘れていたメッセージを一件送信すると、会議室に向かった。
部屋に入ると、新堂さんと御手洗、蒔田が揃っている。
「長谷部、遅いぞ。じゃあ、全員揃ったからミーティングをはじめる」
「その前に新堂さん、いいですか」御手洗が手を上げる。
「アプリの利用料についてですが、会社負担の許可は出ましたか」
「ああ。会社のスマートフォンで決済してくれたら基本的に会社が払うようにしておいた」
「助かります」
「男性のみ課金のアプリが多いが、女性も課金が必要なヤツもある。そういう場合は俺に申請してくれれば許可はとっておくから」
「わかりました」私と蒔田は答える。
「それにしても男は大変だな」私はつぶやく。
「んー。でも、仕方ないんじゃないですか。男性は身体目当てのヤツもいますからね。女性ユーザーの満足度を上げるために、ハードル上げておくのは戦略だと思います」御手洗が応える。
「なるほど。そういう不埒な輩のせいで、男性全体としてコストを支払う羽目になるのだな。とはいえ、実際に性欲丸出しの男はいるからな。私は見たくもないものを送りつけられたぞ」
「そうですか。私はそういうの全然なかったですけど」蒔田が首をかしげる。
「アプリによって違いがあるのかもしれませんね。長谷部さん、どれを使いましたか」
私と蒔田はそれぞれ御手洗に自分が使っているアプリを教えた。
「やっぱり。長谷部さんが使ってるのは男性も無課金で使えるヤツですが、蒔田さんのは男性は課金しないと機能制限があるのですね。しかも、蒔田さんのは個人認証がしっかりしているアプリだからなかなか変なこと出来ないんでしょう」
そういえば、私は面倒くさがって、すぐ使えるのにしたな。そうか。やはり手間を惜しむとそれなりのコストは支払わされるということだな。
「やっぱり男性は課金の方がいいんだろうな。個人認証はさせると使い始めるまでに手間が増えるって意味ではマイナスだ。けれども、ユーザーの質を底上げ出来るなら、長期的にみれば満足度は上がりそうだな」新堂さんはそう言いながら、メモを取る。
「そうですね。真面目に相手を探したいユーザーからしたら、手続きが厳重っていうのはむしろ信頼感につながる気がします」蒔田もうなずく。
「だな。じゃあ、この一週間の報告をしてもらおうか。長谷部から」新堂さんの呼び掛けに私は顔を上げる。
「はい。ご報告の前に、皆さんにマッチングアプリで出会ったご紹介したい人がおりまして」
「えっ?お前何言ってるの?」新堂さんはぽっかりと口を開いたままだ。
私はスマートフォンを通話にすると、相手を選ぶ。
「もしもし。今、どこにいる?……。わかった。じゃあ、受付に私宛だって伝えてもらっていいかな」
会議室はシーンと静まりかえった。御手洗と蒔田も驚いた顔をしている。まったく私のことをなんだと思っているんだろうか。しばらくして、会議室のドアを叩く音がする。
「長谷部さん、お客様です」アシスタントの相模さんの声だ。
「はい、お通ししてください」私が促すとドアが開く。
「怜子ちゃん、お疲れー」
圭が手を振って、部屋に入ってくる。今日も相変わらずオフィスに似つかわしくないチャラそうな服装だ。
「お疲れ。今日は来てくれてありがとう。紹介します。大沢圭さんです」
「よろしくー」圭は丁寧に頭を下げる。
「お、お前。この人、どうしたの?」
新堂さんの声は震えている。どうやら私の期待通り新堂さんは驚いてくれたようだ。
「新堂さん、出会った相手と’その先も良いぞ’っておっしゃってたじゃないですか」
「えっ、そんなこと言ったっけ?でもまあ、良い相手が見つかったのなら……。そうか、確かに俺はお前のことを見くびっていたかもしれん。でも、何で会社に連れてくるんだよ」
「そりゃあ、アプリのアドバイザーなので」
「は?」新堂さんは呆気に取られた顔をしている。
「マッチングアプリのアドバイザーですよ。今回からミーティングに参加する」
「お前、なにさも当然のような顔してるんだよ。俺は聞いてないぞ」新堂さんが抗議の声をあげる。
「大丈夫です。社長には許可を取りましたから」
「いつ?」
「この前、その辺をふらふらしてたので、捕まえて話をしたら’いいよー’って言われましたよ」
「あの、オッサン……」
新堂さんは床を見つめる。仮にも社長に’オッサン’はないんじゃないだろうか。
「昨日、社長さんとは夕食をご一緒させて頂きましたけど、とっても素敵な方ですね。アドバイザーの条件もその場で即決して頂けました」圭が感慨深そうに言う。
「そうか、わかった。大沢さん、よろしくお願いします」
新堂さんはうなだれて応える。どうやらお疲れの様子だ。やはり管理職とは大変なようだな。
「ところで、アドバイザーっておっしゃいますが、どういう方なんですか」蒔田が尋ねる。
「マッチングアプリの出会いに特化した講座の講師をしてるんだ」圭は全員に名刺を渡す。
「なるほど。確かにアドバイザーにはピッタリかもしれませんね。蒔田菜摘です。よろしくお願いします」
「よろしくね。それにしても、菜摘ちゃんかわいいね」
「大沢さん?長谷部さんとお付き合いされているんじゃないんですか」
蒔田は私の方をちらっと見ながら困ったような顔をしている。
「大丈夫。圭とはただのビジネスパートナーだ」私が答える。
「そうそう。今のところはね」圭も私に同調する。
「大沢さん、よろしくお願いします。僕は御手洗伸也です」
蒔田が困っているのを察したのか、御手洗が間に入ってきた。圭に手を差し出す。
「みっくんだね。よろしく」
圭は御手洗の手を握った。普通であればなれなれしいと思える態度だが、圭がするとそうは感じない。彼のキャラクターがなせる業なのだろう。
「さて、会議に戻るぞ。長谷部、報告を続けてくれ」新堂さんの声は弱々しい。
「はい。彼からアプリのプロフィールの作り方を聞きまして。実際に言う通りにしたら反応が良くなりました」
私はこの前、圭から聞いたプロフィールの話をみんなに披露した。
「なるほど。確かに勉強になります。そういう情報は、大切ですよね。やっぱり会えないと使い続けられないですから。例えば、プロフィールの作り方をアプリのヘルプとかに入れてみたらどうでしょうか」御手洗がうなずく。
「それは良いかもしれないな」新堂さんがまたメモを取る。
「ちなみに、蒔田はどんな感じだ?」
「とりあえず、会える人には会ってみたんですが、身体目的の人がやっぱりいるんですよね。マッチングアプリってこういう感じなんですかね」蒔田はため息をつく。
「そんなことないよ」圭が話に入ってくる。
「マッチングアプリって出会い系と一緒にされがちだけど、やっぱり比較的真面目な交際をしたい人が集まるから」
「そうなんですね。でも、出来れば自然な出会いの方が良いのかなって気がします」
「菜摘ちゃんがそう言うのもわかるよ。でも、今って年頃の男女を引き合わせるお節介をしてくれる人も減ったでしょ。それに普通の出会いで良い人を見つけるって実はそれなりに手間がかかる。マッチングアプリってその辺りを埋め合わせてくれるものなんだ」
「うーん。確かにそういう面はあるかもしれませんね。あまり身近過ぎると、人間関係が崩れないか気にしないといけないですから」
言われてみると、自分のコミュニティの外で恋愛しようと思うならば、こういうアプリがないと難しそうだ。
「でしょ。それにオレはマッチングアプリって日本人に合ってると思うんだよね」
「どういうことですか」
「平安時代には、相手の情報があまりない中で文のやり取りをして恋をしていた訳じゃん。マッチングアプリも文章で相手のことを知っていくって意味では似てるでしょ。なんて、そう言うと友だちに’何言ってんだお前’って顔をされるけど」圭は頭を掻く。
「そもそもアプリがなければ出会わなかっただろう相手と偶然つながって、恋に落ちるっていうのもオレは充分運命的だと思うんだ」
「なるほど。そういう考え方も出来ますね」蒔田は微笑み返す。
「まあ、身体目当ての相手は困るっていうのはわかるよ」
「でも、そう言いながら大沢さんもそういうタイプなんじゃないですか」
そう言いながらも蒔田は圭をからかうような口ぶりだ。
「そんなことないよ。オレはまず相手がどんな人なのかってことに興味が湧かないと、どんな美人でもその先ってならないもん」
「どうでしょうね?」蒔田は圭にじゃれるかのように答えをはぐらかす。
「こればっかりは行動で信じてもらうしかないけどさ。話の流れも丁寧に作らないで会おうとしてくる奴とは違うよ」
「そういう人は身体目当てってことですか」
「まずは実際に会ってからって思ってるタイプもいるから必ずではないけどね。でも、そもそも自分の都合だけで手間を惜しむって、あんまり誠意がない感じじゃない?」
「そうですね。でも、身体目的でも大沢さんみたいにじっくりとアプローチするタイプもいるでしょ」
「オレは違うって。まあ、そういうタイプがいることも否定はしないけど、珍しいと思うよ」
圭は口調こそ真面目だが、蒔田とのやり取りを楽しんでいるような表情だ。
「ご自身がその例外ってことですね」そういう蒔田の顔も笑顔だ。
「言っても聞かない人は知らないよ」圭はすねた子どものような口調で返す。
「ふむ。相手の信頼度を何らかの数値で表せるといいんだろうな」
二人の話を聞いて頭に浮かんだことを私は言葉にする。
「それは良いアイディアだとは思うが、どう評価する?」新堂さんが合いの手を入れた。
「シンプルなのは、オークションサイトみたいに評価を付けられるようにすることですかね」私はとりあえず思い付いたことを口にする。
「でも、それだとわざと良い評価、悪い評価をつける人もいるんじゃないでしょうか」蒔田が受ける。
「そうだな。そもそも評価が良い人はすぐ相手を見つけて退場だろうからな。何かシステムの設定で出来る部分がないか考えてみる必要があるな」新堂さんは腕を組んで身体をゆらした。
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